会長のメッセージ
(公社)日本分析化学会 会長 大谷 肇
名古屋工業大学 産学官金連携機構・客員教授
2023~2024年度の会長に選出されました大谷 肇でございます。70年を超える歴史を有する本会の会長に就任させていただくことは、身に余る光栄であると同時に、その重責に身の引き締まる思いでございます。
本会では、2019年に当時の岡田会長のもと、「近い将来見込まれる会員数3000人でも対応できる学会の運営体制の構築」を目指したタスクフォースが発足、改革が着実に進められてきました。具体的には、「年会・分析化学討論会の自主運営」、「Analytical Sciences 誌出版事業の外部委託」「ぶんせき誌の完全電子化」などを実現してまいりました。
一方、2020年からの3年間はまさしくコロナ禍の3年間でもありました。こうした中にあって本会でも、近年の情報革命に基づくオンライン技術の導入が積極的に進められ、2020年の第69年会が初めてのオンライン開催となりました。また、各種講習会・セミナー等も基本的にオンライン開催となり、遠方からの聴講者にはかえって高評価をいただきました。その反面、オンラインだけでは十分な意思疎通ができないことも明らかになってまいりました。特に、本会の重要行事である年会・分析化学委討論会はやはり対面でなければ十分な意見交換ができないことが改めて認識され、これを受けて2022年度の第74回分析化学討論会および第71年会は、他学会よりも先駆けて懇親会開催を含めた対面開催が実現されました。ようやくコロナ禍の終息も見通すことができるようになった今、オンラインやリモートワークの良さは残しつつも、年会・分析化学討論会は従来通りの対面開催を基本にストリーミング配信なども取り入れた、発表者・参加者にとってもより良い方法での開催を進めてまいりたいと考えております。
さて、これまで述べてきたような改革が実現されてきたとはいえ、会員数の減少傾向は依然として続いております。会員にとっていかに魅力ある学会にするかがやはり根本的な課題となっています。いうまでもなく、分析化学は学術における基礎を担うとともに、産業界の活動を支える基盤技術としての側面を有しています。産業界の会員に向けて、年会における産業界シンポジウムなどが開催されてきたことに加えて、近年、新たな試みとして、年会における産官学交流カフェや、関東支部を中心とした分析イノベ―ション交流会なども実施されており、これらを含めた産官学連携をさらに充実させることによって、産業界の皆様にもメリットを実感していただきたいと考えております。
さらに、学術の融合・学際化がますます進行する昨今において、これまでは本会との直接的な関係が希薄であった諸分野における研究者との連携強化も、本会活動活性化の大きなカギとなります。分析化学は、環境科学、バイオ医薬学、材料科学、宇宙航空科学などあらゆる最先端科学においても重要な役割を担っております。こうした先端学術分野の皆様にも、ジョイントシンポジウムの開催などを通じて、分析化学の魅力と必要性を発信していきたいと思います。
これらに加えて、国際交流の推進も重要であることは言うまでもありません。昨今、主要論文数などを始めとする学術分野での我が国の国際競争力の低下がクローズアップされ大きな問題となっております。これを打開するためにも、国際交流の充実は必要不可欠です。コロナ禍による制約がようやく解消しつつある現在、国際交流の活性化にも改めて取り組んでいく所存です。
2023年5月1日